日本草地学会誌
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遺伝子型及び培養条件がアルファルファ(Medicago sativa L.)のカルス及び体細胞胚形成に及ぼす影響
杉信 賢一高溝 正林 秀幸阿部 悟
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1991 年 36 巻 4 号 p. 390-403

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抄録

細胞融合や細胞選抜あるいは遺伝子組換えを行う場合,カルスやプロトプラストからの体細胞胚形成は不可欠である。本報においては,遺伝子型,培地及び外植体がアルファルファのカルス及び体細胞胚形成に及ぼす影響を報告する。カルス及び体細胞胚形成において品種間または再分化系間に大きな変異が認められた。選抜再分化系の体細胞胚形成率は既存品種や再分化系の原品種より著しく高かった。MS培地におけるカルスはBO培地におけるカルスより大きかったが,B5培地のカルスとの間には有意差は認められなかった。MS基本培地内における体細胞胚数はB5基本培地における体細胞胚数より多かった。MS基本培地内においては,通常の再分化培地に移植する前に0.1mg/lNAAを添加したMS液体培地で,カルス小集塊を110rpm 7日間振盪培養した培養法が体細胞胚数が最も高かった。胚軸中央部から誘導したカルスは茎頂,子葉または胚軸下部から誘導したカルスより大きかった。根端から誘導したカルスは他の外植体から誘導したカルスより著しく小さかった。外植体と培地間または外植体と品種間の交互作用は有意であった。一つの再分化植物の自殖系統においては,茎頂から誘導したカルスの体細胞胚形成率は葉柄,子葉,胚軸または根端から誘導したカルスの体細胞形成率より著しく高かったが,別の再分化植物の自殖系統では有意差が認められなかった。以上の結果から,体細胞胚形成には遺伝的背景が培地または外植体より影響が大きく,組織培養を適用した育種においては,選抜により育種材料の再分化能を高めたり,交雑により高再分化系から育種材料に再分化能を付与することがきわめて重要と結論された。

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© 1991 著者
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