日本草地学会誌
Online ISSN : 2188-6555
Print ISSN : 0447-5933
ISSN-L : 0447-5933
集約放牧草地におけるフェストロリウム(品種タンデム)の高位分げつの特徴
菅野 勉福山 正隆佐藤 節郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1993 年 38 巻 4 号 p. 433-439

詳細
抄録

集約放牧草地におけるフェストロリウム(品種タンデム)の高位分げつの特徴をペレニアルライグラスと比較した。高位分げつは,両草津の放牧草地で観察され,節間伸長により地表から押し上げられた高位分げつ節は栄養繁殖体を形成した。3年間の集約放牧を行った後の栄養繁殖体数はフェストロリウム草地が8.3/m^2,ペレニアルライグラス草地が18.7/m^2であった。ペレニアルライグラス草地では各調査コドラートでの既存個体数と栄養繁殖体数との間に有意な正の相関が得られたが,フェストロリウム草地では両者の間に相関は得られず,草地内の放牧強度が低い部分で有意に高い栄養繁殖体数を示した。節間伸長した節間の長さは,栄養繁殖体の潜在的な分散距離と考えられ,フェストロリウムが平均50mm(最大112mm),ペレニアルライグラスが平均35mm(最大90mm)であり,フェストロリウムの節間長が有意に大きかった。節間伸長による栄養繁殖体を生じた分げつの平均展開角はペレニアルライグラスが30°であるのに対し,フェストロリウムでは5°であった。フェストロリウムでは水平に近い分げつに栄養繁殖体が形成されるため,不定根が容易に地表面に到達し,栄養繁殖体の定着がペレニアルライグラスに較べて良好であった。これらのことから,フェストロリウムはペレニアルライグラスと同様に高位分げつによる栄養繁殖が可能であることが明らかになった。

著者関連情報
© 1993 著者
前の記事 次の記事
feedback
Top