日本草地学会誌
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非アロフェン質黒ボク土の下層土酸性改良に対するリン酸石膏の作土施用効果
三枝 正彦藤間 充阿部 篤郎
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1994 年 39 巻 4 号 p. 397-404

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抄録

強酸性下層土を持つ非アロフェン質黒ボク土では,アルミニウムの過剰障害により下層土への根張りが制限され作物の生育・収量が著しく低下する。この下層土のアルミニウムの過剰障害をリン酸石膏の作土施用によって軽減することを試みた。供試土壌としては強酸性で腐植含量を異にする多腐植質黒ボク土(川渡)と淡色黒ボク土(北上)を用い,1)圃場に埋設した円筒試験でリン酸石膏と炭カルの降雨による移動速度の検討,2)オオムギとアルファルファのポット試験によりリン酸石膏と炭カルの酸性改良効果(アルミニウムの過剰障害軽減)を検討した。川渡黒ボク土の作土(0-15cm)に施用したリン酸先行(100g/m^2)は5ヶ月(降雨1012mm)後下層土(15-75cm)に約75%が移動したのに対し,炭カル(0.5kg/m^2)は約82%が作土に残留した。強酸性非アルフェン質黒ボク土に対するリン酸石膏と炭カルの施用効果を検討したところ,腐植に富む川渡黒ボク土ではリン酸石膏施用によってpH(H_2O),交換酸度y_1とも顕著な変化は見られなかったが,腐植の少ない北上土壌ではpHは低下したが,交換酸度y_1も著しく減少した。オオムギ根の伸長に対する施用効果は交換酸度y_1を反映し,北上土壌で顕著であった。また,炭カルの施用効果はリン酸石膏よりさらに大きかった。リン酸石膏の作土施用による下層土酸性改良を想定し,主たる移動形態である石膏の下層土施用効果を検討したところ,リン酸石膏の実用的施用量(1000g/m^2)の10%程度からオオムギ根とアルファルファ根の下層土への伸長改善効果がみられた。この効果は腐植の少ない淡色黒ボク土で顕著であった。リン酸石膏の作土施用による黒ボク下層土酸性改良の可能性が示唆され,その効果は腐植の少ない黒ボク土で特に顕著であると推定された。

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© 1994 著者
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