ヨーロッパ各国より導入したオーチャードグラス21品種に北海道育成4品種を加え,幼苗の耐凍性と雪腐病抵抗性(黒色小粒菌核病Typhula ishikariensis)の検定および圃場における早春の草勢,病害,晩秋の伸長性を調査し,育種材料としての評価を行った。耐凍性および雪腐病抵抗性は品種の地理的起源と密接に関連していた。これらの抵抗性の品種間の順位はロシア・ノルウェー群≧スウェーデン・北海道群>東ヨーロッパ群≧中央ヨーロッパ群>フランス群であった。耐凍性と雪腐病抵抗性の間にはr=0.89の強い正の相関が認められた。越冬ストレス抵抗性(耐凍性と雪腐病抵抗性)と早春の草勢の間には正の有意な相関が認められたが,この相関の弱さは暖かい地域からの品種の中に越冬ストレス抵抗性が弱いにも関わらず,早春の草勢が優れているものがあったことによる。一方,越冬ストレス抵抗性と黒さび病抵抗および晩秋の伸長性の間には強い負の相関が認められた。以上の結果から越冬性と秋の伸長性の優れた品種育成のためには,北海道と同緯度で冬の気象条件が厳しい東ヨーロッパの遺伝資源に注目する必要があると考えられた。