日本草地学会誌
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ペレニアルライグラス-シロクローバ混播草地において放牧強度がシロクローバ品種の移行に及ぼす影響
山田 敏彦市村 堅吉澤田 均
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2000 年 46 巻 2 号 p. 95-100

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抄録
シロクローバ(Transition repens L.) の2品種, 大葉型品種(Grasslands Kopu)と小葉型品種(Grasslands Tahora)を1:1の種子重量割合でペレニアルライグラス(Lolium perenne L.)と混播した草地を造成した。ジャージー牛の雌育成牛を供試して, 電気牧柵を用いたストリップ放牧と定置放牧を4年間(1995-1998)実施した。単位面積当たりの放牧頭数はストリップ放牧区では定置放牧区の2倍として, 集約放牧区および粗放放牧区の試験区を設定し, 放牧強度の違いによる草地の現存量およびシロクローバ品種の動態に関する調査を行った。集約放牧区は粗放放牧区と比較して現存量が多く, その影響を受けてシロクローバの割合が低かった。集約放牧区では試験期間を通して20-30%の良好なシロクローバ割合が維持された。4年間の放牧後, 集約放牧区および粗放放牧区からシロクローバ個体を収集して, 温室で生育させた。環境の違いによる可塑性の影響を取り除くために, 温室で播種した2品種(Grasslands Tahora, Grasslands Kopu)の個体とともに収集個体について生長したほふく茎の切り取りと移植を2度行った後に, 個体の小葉長を測定した。粗放放牧区では収集個体の小葉長に大きな変異がみられた。一方, 集約放牧区から収集個体の大部分は小葉型品種のGrasslands Tahoraと類似する小葉長を示した。このことから, 放牧強度の強い集約放牧では, 小葉型品種の適応性が高く, 徐々に優占したものと考えられた。また, Grasslands TahoraはGrasslands KoPuより耐寒性に優れていることから, 試験地における冬期間の低温もGrasslands Tahoraの優占に関与していると推察された。一方, 粗放放牧区では選択採食により試験区内に放牧強度の違いがみられ, その結果, 大葉型と小葉型の品種が混在する草地となった。本研究の結果から, 小葉型のシロクローバ品種, Grasslands Tahoraは冷涼な地域におけるペレニアルライグラスを用いた集約放牧草地で安定したクローバ率を維持でき, 集約放牧に適した品種であると考察された。
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