日本草地学会誌
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牧草の地帯区分に及ぼす地球温暖化の影響 : 2.バヒアグラスの栽培適地と生産量の変動予測
佐々木 寛幸神山 和則須山 哲男澤井 晃福山 正隆
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2004 年 49 巻 6 号 p. 606-610

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抄録

地球温暖化の原因となる大気中の二酸化炭素(CO_2)濃度は,近年著しく上昇している。わが国においても,地球の温暖化に伴い,暖地型牧草の適応地域が拡大する等,各飼料作物の生育適地が変化し,それに伴い地帯区分も変更しなければならない事態が予測される。そこで,わが国の草地で利用される暖地型牧草としてバヒアグラスを取り上げ,栽培適地と生産量の変動を予測した。気象生産量を推定するために,圃場試験で得られた85データを用いて再生期間,平均気温,日射量を説明変数とするニューラルネットワークモデルを構築した。また栽培適地については,1月平均気温4℃の線が北限として推定された。現在,30年後,100年後の2次メッシュレベルの平均気温と日射量のデータを,ニューラルネットワークモデルにあてはめて月別生産量を算出した。100年後の生産量を算出する際にはCO_2濃度の影響を示す式で補正した。これを積算することにより,各年代の年間乾物生産量と栽培可能地帯を示す地帯区分図を作成した。現在の地帯区分図を30年後,100年後に推定される地帯区分図と比較すると,栽培可能地帯が徐々に北上・拡大し,生産量が大幅に増加することなどが明らかになった。

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© 2004 著者
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