日本草地学会誌
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禾本科の牧草および野草の葉に見られる機動細胞について
岩田 悦行
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1962 年 8 巻 1 号 p. 7-14

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抄録

今回,盛岡附近を中心として栽培され,あるいは野生する禾草38種類を選び,それらの葉の横断切片により,機動細胞の形状や発達の程度を検討した。1)これらの機動細胞は,葉身上における配列状態,細胞の由来,脉間部における厚さの比率などによりつぎの8型に分けられた(第1表);第I型上面表皮の各脉間部に位し,表皮および葉肉組織に由来した細胞よりなる。第II型第I型とほぼ同様,但し機動細胞の内側に小維管束が発達する。第III型主脉直上部に1条をなす,表皮および葉肉組織に由来した細胞よりなる。第IV型主脉の両側上面にのみ分布,数個の表皮細胞により形成される。第V型上面表皮より由来,各脉間部に分布し,この部分は強く陥凹する。第VI型第V型とほぼ同様,但し脉間部の陥凹は彼ほど深くない。第VII型第V・VI型とほぼ同様,但し脉間部は平坦かかすかに凹む程度。第VIII型上面表皮に由来した細胞が,脉間部および細脈上にわたつて帯状になる。2)各型の機動細胞と乾湿に伴う葉身の開閉運動の難易を検した。それによると,第I・II型では敏速に巻曲または展開,第III・IV型も敏速に折りたたみまたは展開運動を行つた。第VIII型はほとんど反応なく,第V・VI・VII型では,速かに巻曲するものあるいはほとんど巻曲しないものなど反応の程度が区々であり,それらと機動細胞の大きさ,発達の程度,脈部の陥凹の程度などとはほとんど関係がなかつた。3)禾草の葉身の乾湿に伴う開閉運動は,機動細胞のみならず,葉全体の組織構造,さらに機動細胞およびその周辺の組織細胞の生理的特性が,重大な関係をもつものと見られる。

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© 1962 著者
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