抄録
ladino cloverのほふく茎の節間の太さ,長さは隣接の葉の草丈,重さと,また節間の長さは出葉速度と相関がある。この性質を利用して,節間の太さ,長さを節位別にしらべて,過去から現在に至る葉重,出葉速度の変化を推定できる。ただしそれらは収量の一面を代表する形質であるから,収量の推定には,その別の面を代表するほふく茎数を同時に考慮する必要がある。節間の太さ,長さに影響する条件をみると,一般に刈取はその後に新生する3〜数節の節間の太さを細く,長さを短くする。詳しくみると,ほふく茎のおかれた条件や個体によって刈取後の短縮や回復のしかたが異なり,5つの型に分けられる。肥料不足,高温,干ばつ,虫害などの悪条件が太さ,長さ,に影響を与えるが,特に夏にしばしば起る干ばつの作用は大きい。千葉と北海道のほふく茎を比較すると,北海道では生存期間が長く,1年以上のものが多い。千葉では夏に部分的に枯れるものが多く,生存期間が短く1年以下である。1本のほふく茎の1年の出葉数は,北海道は千葉より少なく,この点寒地は暖地に比べ生産上不利である。千葉では夏がれにより,8,9月に節間の長さが次第に短くなり,10月にやっと回復に向うが,北海道ではそのような生育相はとらない。暖地において生産上最も不利とする夏がれおよび短い維持年数という欠陥を克服するには,このような夏のほふく茎の変化,とくに枯死腐敗を防いで健康なものにすることが課題となる。ほふく茎を提供され,気象,牧草生育状況をお教え下された北海道農試宗谷支場及川寛技師に厚くお礼申上げる。