ある特定商品の生産量や輸出量が世界一であっても,その国の総輸出額や総生産額に占める割合がきわめて小さいことがある.前者を絶対量的視点,後者を相対量的視点と呼ぶことにすると,後者の方がより地誌的である.これまでの地理教育では前者の絶対量的視点が重視される傾向があり,本来あるべき地誌にはほど遠い「物資調達の地理」となってしまっていた.また,いずれの視点による場合でも地域スケールが問題となる.もし国をいくつかの地域に分けると,絶対量はむろんのこと,その地域での部門別構成比のような相対量もかなり異なるものになる.これらを考慮した新たな地誌的記述の枠組の開発が期待される.