地理学評論 Series A
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短報
愛知県瀬戸陶磁器産地における産業用陶磁器生産の変化と流通構造
勝又 悠太朗
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2020 年 93 巻 1 号 p. 17-33

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抄録

本稿は,愛知県瀬戸陶磁器産地を対象に,産業用陶磁器生産企業の生産品目の変化と生産流通構造を明らかにした.当産地は,伝統的な陶磁器産地として知られるが,現在は産業用陶磁器が主力製品となっている.研究対象企業は,生産品目の構成により3類型される.特化型企業I型は,架線碍子を主力製品とし,受注先企業との取引関係は総じて固定的である.特化型企業II型は,架線碍子以外の特定製品の生産に特化し,主力製品の高付加価値化を重視している.また,特化型企業はI型とII型ともに,地域内分業を基調とした生産構造を形成している.一方,多様化型企業は,製品の多品目化を進め,特定製品に依存しない生産構造を構築している.特化型企業に比べると多くの受注先企業を有しており,外注先企業は全国に広がっている.なお,いずれの企業類型も,県域を越えた広域的な受注連関を形成している.このように,当産地は,性格が異なる企業の集積により,産業用陶磁器を中心としたさまざまな製品の受注を広く獲得する産地として存続している.

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© 2020 公益社団法人日本地理学会
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