地理学評論 Series A
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論説
秋芳洞内の小気候と観光客への影響
安藤 奏音
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2020 年 93 巻 6 号 p. 425-442

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抄録

観光洞内の二酸化炭素濃度の上昇は人体への健康被害を引き起こすため,モニタリングの実施が推奨されている.秋芳洞は世界最高水準の年間観光客数を持つ観光洞の一つである.しかし,大気環境やその状態が観光客に与える影響に関する追究が不足している.そこで,秋芳洞内の小気候の実態を明らかにし,観光客の心身に与える影響を把握することを本研究の目的とした.夏季と冬季に洞内で定点観測と移動点観測を行い,気温,相対湿度,二酸化炭素濃度を測定した.その結果,夏季の気温の変動は1°C以内,相対湿度は94%以上を維持し,外気による移流や混合の影響が小さいと考えられた.二酸化炭素濃度は人体への健康被害を引き起こす基準を上回った.また,洞内人口密度の算出結果から,観光客同士が親密距離に侵入し合う時間帯があった.以上の結果を踏まえると,自然条件に基づく観光客の適正収容量の算出が推奨されているが,観光客の安全面という人的条件も考慮すべきであると本研究は指摘する.

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© 2020 公益社団法人日本地理学会
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