地理学評論
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但馬における〓柳産業の地理学的研究
桑原 公徳
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1957 年 30 巻 12 号 p. 1129-1142

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抄録
(1) 但馬の〓柳産業は,寒冷単作地帯の余剰労働力を利用し,円山川の低湿氾濫原にアダプトした土地利用によつて発達し来たものであるが,現在では氾濫原の水田化,〓柳の自然条件に対する適応力の強いこと,および換金性の高いことから,次第に栽培の重心が高冷山地へ移行し,また他府県にも普及するにいたつて,豊岡付近の独占的地位はゆるぎつつある。
や中小市民階級の経済と密接に結びついて来たものであるゆえ,今なお加工面では但馬市街部の代表的な地方産業として,無視できない意義をもつている.
(3) かくて現在の但馬〓柳産業は,加工・生地製造・栽培の間に地域分化を遂げ,旧豊岡町・出石町・国府の中心街に加工業,市街周辺部に生地製造業,山間部に原料栽培地区というような地域構造を示している.
(4) 生産形態には,停滞的・在来的・零細的・前近代的性格がかなり強く認められる.しかし前近代的であるところに,この産業の存在理由があり,むしろそれを要請しているがごとき社会構造の中に,但馬の地域性をよみとることができるように思われる.
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