抄録
ホウ素とカルシウムイオンを含む溶液から水を蒸発させることによりカルシウムホウ酸塩鉱物を析出させる実験を25 ℃で行い,その際のホウ素同位体分別を調べた.ノボライトとギャロライトが得られ,ノボライトについて同位体分析を行った.鉱物中の11B/10B同位体比はいずれの場合も溶液中の同位体比より小さく,重い同位体11Bが選択的に溶液に分配することが示された.今回のノボライトについてのホウ素同位体分別は,結晶構造中で三配位平面構造を持つホウ素原子の数と四配位四面体構造を持つホウ素原子の比(BO 3 /BO 4比)がノボライトと同じであるナトリウムホウ酸塩鉱物のホウ砂やカリウムホウ酸塩鉱物のK 2 [B 4O 5(OH)4 ]2H2Oについての結果とよく調和していた.本研究のカルシウムホウ酸塩に関する結果は,ホウ素鉱物のホウ素同位体組成がBO3/BO4比に強く影響されており,カチオンの種類にはあまり依存しないということを再確認し更にその適応範囲を広めるものである.