抄録
今次大戦中におけるわが国の住宅の被害は,一応発表された資料から見ても,関東大地震による被害の数倍にも及んだし,その結果,全体の20%余の住宅が失われた.戦争による戦災都市の住宅の被害を都市別に見ると,強制疎開の場合も,戦災の場合も,量的には大都市の被害が顕著で,被害率ではむしろ地方都市の方が目立つた.戦災都市の終戦当時の住宅事情について見ると,大戦末期に大量の疎開者を迎えた直後に罹災した地方混成都市は,特に住宅事情が悪化.し,敗戦で人々の離散が目立つた鉱工業,港湾,旧軍港都市の住宅事情は,それほど悪化しなかつた.戦災都市の戦後の住宅の復興は,敗戦の影響が少なく,土着人が多かつた上,建築資材,食糧に恵まれた地方混成都市や商業都市から始まり,戦後のインフレ景気につずく朝鮮事変勃発による特殊景気が到来すると,大都市の住宅復興も軌道に乗り始めた.しかし長期間に亘る占領政策の悪影響が深刻であつた地方重工業都市,港湾,旧軍港都市の住宅復興は容易でなかつた.戦後5ケ年間に竢工した住宅数は,罹災住宅数の35~36%であり,未届住宅を加算しても,罹災住宅数の半ばにも達しなかつた.また戦前住宅に対して,60%ほどの住宅が復元したのに過ぎなかつた.しかも戦後住宅の規模は,罹災住宅に比較にならぬほど小規模のものであつたし,人々は終戦後5年目に戦災前人口の90%まで復元してしまつた.したがつて戦災都市の居住人員1人当りの畳数は,戦後8ケ年後になつても3.24畳という狭少さで,戦前の3.7畳あるいは非戦災都市の3.69畳とは比較にならず,戦前なみの住宅事情への復元も前途多難であることを物語つている.