地理学評論
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日本のパルプ用材流動と地域的性格
野本 晃史
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1960 年 33 巻 6 号 p. 300-311

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抄録

日本には現在パルプ用材供給地域として北海道北東部,奥羽南部,中部地方西部,中国山地,四国南西部,九州南西部がある.なかでも北海道と中国山地は主要供給地域となつている.北海道がエゾ松,トド松供給地域であるに対し,中国山地は赤松供給地域である.赤松利用は昭和25年頃を契機として盛んとなり,広葉樹利用の始まる昭和35年まで赤松は主要用材となつてきた.パルプ工業立地の南下現象は世界的傾向であるが,日本の場合,旧領土喪失による資源不足が南下を促進している.戦後の工場立地は,赤松資源林周辺の工場適地に誘致された.中国山地地域は約15の工場に用材を供給している.他の供給地域が1工場の独占的供給構造をなすに対し,争奪的であり,分配的である.各工場の用材仕入圏の形態と仕入量をみれば,工場立地と生産能力を知りうる.中部地方各工場の仕入圏は北日本に伸展せず,赤松を求めて西南日本に拡大している.北睦,東海道の各工場は中国山地に用材を求めている点注目すべきである.中国山地でも広島県山地地域が問題であり,用材争奪の結果は,資源涸渇と水害問題,坑木および一般用材コストの高値をよび,地域経済に波及するところ大である.

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