地理学評論
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京浜工業地帯南部の調査 第1部 (大森・糀谷・羽田地区)
松田 孝
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1960 年 33 巻 7 号 p. 345-362

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抄録
I. 大森・羽田地区の工業の概況 (1) 全国でもつとも大きな機械工場の密集地域である. (2) 機械工揚の80%は従業員数29人以下の零細工場である. (3) この地区の機械工場の大部分は下請工場である.
H. この地区における工業の成立過程
(1) この地区は1930年代以前は主として農漁業,とくに海苔養殖業の地域であつた. (2) 工業地域化の最初の契機は,第1次大戦および関東大震災であつた. (3) しかし本格的な工業化は, 1930年代以後であつた.その主要な契機は戦争による軍事的重化学工業の発展と,政府によつて計画された大企業の要請による京浜運河および埋立地の造成である.運河および埋立地の建設により,漁業もできなくなり,地元民も工業化を余儀なくされた.
III. 大森9丁目における機械工場の性格業種・規模などの点で大森・羽田地区とほぼ同様の傾向を持つ大森9丁目の工業の実態調査をおこなつた.
(1) 規模零細で変動性が大きい. (2) 全工揚の40%は1935~36年に設立された. (3) 地元出身の工場主はきわめて少ない. (4) 全工場の94%は下請工場である. (5) 親工場の所在地.親工場中心の圏構造を示さない. (6) 抑圧された下請工場主と労働者の状態.この地区には失業ないし半失業労働者のプールが形成されており,これが不安定な中小下請工場群の存立の基盤になつている.また仕事の上で下請工場主間に,激しい競争と同時に強い依存関係が認められる.
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