地理学評論
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日本のセメント工業立地
菊地 一郎
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1961 年 34 巻 10 号 p. 563-569

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抄録
日本におけるセメント工業立地に関する従来の研究は,個別的であると同時に,指向論(原単位および原価分析による最低生産費用地への指向,たとえば原料地指向とか市場指向など)による議論がほとんどであつた.'これでは立地を地域現象としてとらえ,全体の立地を地域的に理解しようとする地理学的立場からは不満である.そのうえ,これまでに販売面で過当競争さへ起してきたわが国のセメント工業にあつては,市場を通じて各社工場間の相互関係がきわめて密接となり,その中の一つの工場をとり出して立地を論ずることは妥当ではなくなつた.現在,わが国のセメント工業においては,原料は比較的普遍的に分布し・市場も地域的に広く拡大してきたので,それらの立地は各社の市場地域網の拡大政策と各社工場間の市場地域の独占化競争の二重の結果であるとして,市場地域の配列を通してみるとき,全体の立地がはじめて明瞭に理解され,将来の立地に対するある程度の予測さへも可能になつてくる.
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© 公益社団法人 日本地理学会
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