地理学評論
Online ISSN : 2185-1719
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
近世城下町の変質
近世城下町の都市域構造とその変質について (2)
松本 豊寿
著者情報
ジャーナル フリー

1962 年 35 巻 5 号 p. 212-223

詳細
抄録

18世紀も中葉以降になると近世城下町の変質が進行する.この変質は型態的なたんなる城下都市域の後期的膨張にはとどまらない,軍営都市を表象する囲郭都市的構成が,都市周辺部においてくずれる点に注意すべきである.城下町変質の内容においてもっとも重要なものとして,ここに取り上げたいのは個有な封建都市的構造の弛緩と解体であろう.本来的な士庶居住区分制は次第に崩壊し,下級侍町は機能的には事実上町屋化する.侍町と町屋の身分的職種的二元原理にたつ双分都市としての近世城下町は,もはや解体への一路をたどるのである.独占的営業制が自由営業制に代り,経済都市への成長が目立つようになる.特権的街区の否定は旧い封建的都市域分化の修正をもたらさずにはおかない.この場合,地理学課題の1つとして問題になるのは城下都心の移動と再編である.
身分制と特権制都市の変質は城下町近代化への一歩前進を意味し,領主的軍事都市より市民的経済都市への傾斜を準備する.この過程において東北目本と西南目本の地域差が問題となるが,その解明について今後に残された課題がすこぶる多い.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top