地理学評論
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天竜川・川路付近の氾濫堆積物について
井口 正男
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1963 年 36 巻 11 号 p. 669-674

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抄録

昭和36年6月末の天竜川出水によつて飯田市川路付近では甚だしい氾濫とそれに伴う堆積をみた.氾濫は第2章で述べるように27日深夜から半日間にわたつてほぼstableな水位を保つたものと思われ,堆積物は第3章で述べるように多量の砂質物質,シルト質物質からなつており,非常に分級がよいという目立つた特徴をもつていた.
そこで約50箇の試料を採取し,第4章で述べるように,各試料について粒度分布曲線の折れ点を図式方法から求め,細粒の方の折れ点に相当する粒径を限界粒径と呼び,その大きさをd0であらわす.d0の静水中での沈降速度 (W0) は乱流の鉛直方向の変動速度 (W'), ひいては流速と対応していると考え, W0の分布図(第5図)を画いた.
以上のようにして川路付近の氾濫堆積物には, (1) 砂質,シルト質物質が大部分を占めること, (2) W0の値が特有な分布を示している,などの特徴が認められた.このような特徴を説明するには,上流から多量の細粒物質が供給され,一旦溜つた水が天竜峡から吸引されるような状態で流出したと考えるのが好都合であることがわかつた.

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