地理学評論
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日本における盛夏の小乾燥季について
福井 英一郎
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1964 年 37 巻 10 号 p. 531-547

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抄録
東アジアー帯に発達する夏の雨季は従来,太平洋からの南東季節風によって説明されて来た.しかし北海道を除いた日本のほとんど全部の地方では盛夏を中心としてかえって雨量は減少し,梅雨季と台風季に挾まれた軽徴な乾燥季が形成され,決してこの問題が単純でないことを示している. Flohn1)はこのことに関連して“月別の平均降水量や頻度によって見ると,日本では夏の初めと終りに雨季が現われ,途中7月中旬ごろから始まる乾燥季によってこの雨季は前後に2分されることが知られる.既にJ. J. Reinは1876年にこの日本の夏の天候の三重構造について記述しているにもかかわらず,夏の全期間を通じた雨季というような小説的表現が広く認容され,これを南東季節風と結びつけて,夏季の凡ての現象が太平洋からの湿潤気団の侵入によって支配されると考えられて来た.”と述べている.このように8月を中心とする日本の小乾燥季は気候学上からも非常に重要な問題であるが,この時季があたかも1年中での最も高温な時季とも一致するために,水利用の問題とも関連して地理的にも産業経済の諸方面からも重要且つ興味ある事実を提供している.本論においては最初にまずその現象自体を明らかにした上で原因および影響などに論及したい.
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