主として60年以上の観測のある地点について,その雨量の長期変動傾向を Residual Mass-Curve 法で比較検討した.平年値としては1921~50年の30年平均を採用した.その結果,表日本型,裏日本型,北海道型の3通りの変動様式の存在することを確認した.表日本型は1880-1910年に多雨年が持続し,以後約30年平均の状態がつづき, 1948年頃からふたたび顕著な多雨期に入り,毎年平年値10%増し程度の豊富な降雨をみている.裏日本型は全般的傾向としては表日本型に似ているが,変動の巾が著るしく小さく,変動様式ははっきりしていない.北海道型は表目本型と正反対で,全般的に少雨年の持続する傾向が強かった.日本の雨の長期変動を論ずる場合には,この地域性の存在に注意する必要がある.
夏冬両半年の雨量に分けて,その長期変動をみると表日本での冬半年の雨の多い年の持続と裏日本側での一様性とが目立つ.夏半年の雨はほぼ同一の変動様式を示していた.
最近の雨量増加の傾向は西南日本に顕著で,東北日本はそれほどではなかった.