地理学評論
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37 巻, 5 号
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  • 関口 武
    1964 年37 巻5 号 p. 217-225
    発行日: 1964/05/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    主として60年以上の観測のある地点について,その雨量の長期変動傾向を Residual Mass-Curve 法で比較検討した.平年値としては1921~50年の30年平均を採用した.その結果,表日本型,裏日本型,北海道型の3通りの変動様式の存在することを確認した.表日本型は1880-1910年に多雨年が持続し,以後約30年平均の状態がつづき, 1948年頃からふたたび顕著な多雨期に入り,毎年平年値10%増し程度の豊富な降雨をみている.裏日本型は全般的傾向としては表日本型に似ているが,変動の巾が著るしく小さく,変動様式ははっきりしていない.北海道型は表目本型と正反対で,全般的に少雨年の持続する傾向が強かった.日本の雨の長期変動を論ずる場合には,この地域性の存在に注意する必要がある.
    夏冬両半年の雨量に分けて,その長期変動をみると表日本での冬半年の雨の多い年の持続と裏日本側での一様性とが目立つ.夏半年の雨はほぼ同一の変動様式を示していた.
    最近の雨量増加の傾向は西南日本に顕著で,東北日本はそれほどではなかった.
  • 太田 陽子
    1964 年37 巻5 号 p. 226-242
    発行日: 1964/05/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    大佐渡沿岸には数段の海岸段丘が発達しており,それらは高度,連続性などから第1段丘 (160~220m), 第2段丘 (80~140m), 第3段丘 (60~120m), 第4段丘 (35~70m), 第5段丘 (25~40m) および第6段丘 (5~8m) の6段に大別される.とくに,二見半島から大佐渡西岸には発達が顕著であるが,東岸にはきわめて断片的に小平坦面として分布するにすぎない.これらの中で第3, 第4段丘はほぼ全域に巾広く,また第6段丘は狭いが島全体をとりまいて分布する.段丘面の性質は地域によりかなり異なっている.すなわち,西岸ではおもに外洋における海蝕作用による海成段丘として,真野湾沿岸ではやや内湾的な場所で多少堆積作用も働いた結果の海成段丘として形成された.東岸では,急崖下の小規模なおし出し状隆起扇状地の性格をもつ所が多い.国中平野では,第2, 第3段丘は金北山下の斜面を流下する諸河川によって堆積された隆起扇状地であるが,第4段丘は,比較的厚い浅海堆積層の堆積面として形成された.なお第6段丘は全地域において海成段丘であり,温暖な fauna を含む厚い海成冲積層からなる国中平野の冲積面に続いており,日本各地で認められている冲積世初期の海進に基く地形であろう.第4段丘は冲積世海進前の海面低下期に先立つ比較的明瞭な海進期に形成されたものと思われる.
    段丘面の性質の地域的差異を生じた原因は,西が緩やかで東が急斜面をもっという大佐渡の非対称な地形と,西側が外洋に面し,国中平野側が内湾的であったというような,後背地の地形および前面の海況などがおもなものであったと考えられる.このように,背後の地形や海況に著しい差異がある所では,岩石的制約は,火山岩地域などのような抵抗性の大きい岩石地域における段丘面上の stack の存在などとして現われてはいるが,段丘の形成には二次的な意味をもつにすぎないと思われる.
    段丘の高度は,東西方向では大きな差異はみられないが,南北方向では島の両端から中央部に向って高くなり,しかも古い段丘ほどその傾向が著しい.おそらく第1段丘形成時(あるいはその前から)から島の中央部に軸をもつ撓曲的性格の上昇運動がつづき,その間に全域にわたる海面変化が繰返されて現在のような段丘の配列をみたのであろう.地殻運動と海面変化との関係についてはまだわからないが,少なくとも段丘面の高度の地域的変化を生じた原因は上述の示差的な地殼運動であるらしい.
  • 河村 武
    1964 年37 巻5 号 p. 243-254
    発行日: 1964/05/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    都市気候総合研究班の観測資料を使用して,比較的純粋に都市の影響が気温分布に反映すると考えられる埼玉県熊谷市について,気温分布の特性と,それに及ぼす気象的要因の影響を明らかにした.その主要な成果は次の通りである.
    年間24回の詳細な気温分布の観測により,四季を通じて“都市温度”1)の存在が確認された.また気温分布と建蔽率の分布との間にはかなり密接な関係があり,風が弱く無風に近い状態では都市域内部に現われる高温域の中心と建蔽率のもっとも大きい地域とは一致する.市街地とその周辺の郊外域との境の付近には気温の急変する地帯が現われる.
    気温分布のパターンを変化させる気象的要因としては風の影響が顕著である.無風時と比較すると,風がある場合は高温域が風下側へ移動すること,市街地の風上側では郊外の低温な空気が建蔽率の低い地域に沿って市街地内部に侵入することなどの事実が認められる.
    夜間の都市内外の気温差と気象的要因(雲量・風速・水蒸気張力・気温)との関係を表わす実験式は,これまでに外国の都市 (Uppsala, Bonn) で得られた結果と非常によく類似している.すなわち,風速の影響がもっとも大きく,雲量がこれに次ぐ.しかも昼間の雲量が夜間(観測時)の雲量よりも効き方が大きいことは,日射の影響が大きいことを示していて,夜間の放射冷却の影響とともに,都市内外の地上構成物質の熱的な性質の差が都市温度の成因として重要であることを示唆している.
  • 1964 年37 巻5 号 p. 255-263_2
    発行日: 1964/05/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
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