地理学評論
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熊谷市における気温分布の解析
河村 武
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1964 年 37 巻 5 号 p. 243-254

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抄録

都市気候総合研究班の観測資料を使用して,比較的純粋に都市の影響が気温分布に反映すると考えられる埼玉県熊谷市について,気温分布の特性と,それに及ぼす気象的要因の影響を明らかにした.その主要な成果は次の通りである.
年間24回の詳細な気温分布の観測により,四季を通じて“都市温度”1)の存在が確認された.また気温分布と建蔽率の分布との間にはかなり密接な関係があり,風が弱く無風に近い状態では都市域内部に現われる高温域の中心と建蔽率のもっとも大きい地域とは一致する.市街地とその周辺の郊外域との境の付近には気温の急変する地帯が現われる.
気温分布のパターンを変化させる気象的要因としては風の影響が顕著である.無風時と比較すると,風がある場合は高温域が風下側へ移動すること,市街地の風上側では郊外の低温な空気が建蔽率の低い地域に沿って市街地内部に侵入することなどの事実が認められる.
夜間の都市内外の気温差と気象的要因(雲量・風速・水蒸気張力・気温)との関係を表わす実験式は,これまでに外国の都市 (Uppsala, Bonn) で得られた結果と非常によく類似している.すなわち,風速の影響がもっとも大きく,雲量がこれに次ぐ.しかも昼間の雲量が夜間(観測時)の雲量よりも効き方が大きいことは,日射の影響が大きいことを示していて,夜間の放射冷却の影響とともに,都市内外の地上構成物質の熱的な性質の差が都市温度の成因として重要であることを示唆している.

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