地理学評論
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中気候の立場からみた関東地方における下層大気の熱収支について
榧根 勇
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1965 年 38 巻 3 号 p. 145-161

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抄録

筆者はすでに,関東平野部における気温分布の中気候学的特徴について,その現象面を明らかにしたが,本稿では,そのような気温分布の成立に,いかなる因子が関係しているかを明らかにすることを目的とした.まず日変化の影響が顕著に現われる下層大気について,陸地上および東京湾上における熱収支方程式をたて,水平面全天日射量・短波長反射・大気の有効逆放射・蒸発・地中への伝導・海水への伝導の各項を実験的ないしは理論的に推定した.それらの各項の収支として得られる,半目単位で下層大気が吸収・放出する熱量をもとにして,前記の気温分布の成因について若干の解釈を試みた.熱収支計算は,条件が比較的単純である快晴・静穏な日を選びだして行なった.
寒候期における海岸による気温の温暖化が, 20~351y/day程度と見積られたこと,また夏季には蒸発項の大きさが日射量の約50% にも達し,これが気候の緩和作用として大きく働らいていること, 5月には陸上の気温に対する海風の侵入による影響が明らかに認められること,などの結果が得られた.

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