地理学評論
Online ISSN : 2185-1719
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
駿河湾北部に発達する田子の浦砂丘の研究
小川 賢之輔
著者情報
ジャーナル フリー

1965 年 38 巻 4 号 p. 241-259

詳細
抄録

本論文は,駿河湾北部に存在する,田子の浦砂丘を研究することにより,該砂丘類似の地形2)の成因・形成過程及び形成の時期等を解明しようとするものである.筆者は,該研究を進めるにあたり,地形学的方法・地質学的方法及び,考古学的方法等を採用して,下記考察を試みた.
1)海岸に発達する,砂丘地形の観察・地質構造の解明及び,堆積物の岩質等により,物質の供給源と運搬営力とを考察した. 2) 該砂丘類似の地形形成過程に関しては,主として,砂丘の一般地形・地質構造・構成する地層の層相及び,物質の粒度・運搬営力・氷河期及び,地殼変動に於ける海面の昇降・風波の営力等の関連に於て,堆積機構・形成過程等を考察した. 3) 該砂丘類似の地形形成の時期に関しては,洪積世以後の海面の昇降・生物化石・Key bedの追跡・砂丘に埋没している文化遺跡の調査・歴史上の事実等により,砂丘形成時期の考察を試みた.
以上の考察により,一応下記の通り堆論した.即ち, 1) 海岸に発達する,砂丘類似の地形のあるものの成因は,まず,主として,付近河川によって,内陸より運搬された物質・海食により崩壊した物質等が,主として,沿岸流によって,浅海底に運搬され,狭長に堆積して,海面下に沿岸州を形成した. 2) 浅海底に形成された沿岸州は,やがて,海退に伴って海面上に姿を現わし,砂丘の基底をなす砂州を形成した. 3) 砂州が形成されるや,風波の営力による飛砂が堆積し,砂州を覆って,砂丘が発達した.従って,現在各地に存在する,該砂丘類似の地形のあるものは,既に,以上の形成過程に於て,今日観察される地形を決定される。4) 該砂丘類似の地形の,あるものの形成時期は, 2期に分けられる.即ち,前期は,海面下で,沿岸州の成長しつつある時期であり,後期は,海退に伴って,海面上で,砂丘の形成されつつある時期である.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top