地理学評論
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香川県塩江付近の小谷における水の流出について
平田 重夫
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1966 年 39 巻 11 号 p. 713-729

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抄録
自然の流域からの水の流出は,流域の土地条件によって変化する. 1963年夏期に香川県塩江付近の二つの小流域において流域の地質と流出の関係を調査した.二流域の流域面積は,各々1km2弱で,流域の平均高度・平均勾配・植生などはほぼ等しい.流域Iは大部分和泉層群下部の頁岩から成り,流域IIは大部分花崗岩から成る. 3カ月間の流量実測から,直接流出・地下水流出を分離し,次の結果を得た. 1) 両流域からの直接流出について,流出率およびハイドログラフの形は,降雨の特性および流域の初期の湿潤状態によって著しく異る. 2) しかし,降雨の特性,流域の湿潤状態が同一の場合は,両流域からの直接流出の形に明らかな差違が認められ,流域Iの直接流出のハイドログラフはより扁平であり,より小さなピークがゆっくりとあらわれ,直接流出は長く継続する. 3) 地下水流出についても,流域Iの方がより緩やかな流出をする. 4) このように,流域Iの方に緩やかな流出が行われるのは,主に頁岩層から成る流域Iが,より粗粒な厚い風化土壌を有し,浸透能が大きく,また,河床の堆積物が多量で,水の流下に対する抵抗が大きいためであると考える.
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