抄録
戦後,発電・工業・上水道などの用水需要が急速に増大したが,新河川法の施行によりこのような資本主義的水利の河川への本格的な進出に道が開かれ,従来の河川水利秩序は大きく再編成されるであろう.その場合どの河川でどのような問題が生じるかということを予想するためには,まず河川水利秩序の現状を把握しておかなければならない.このような問題意識にたって北海道を除く全国55水系の河川を水利秩序という側面から分類してみた.水利秩序は水利施設相互の諸関係として現われるという見方にたって, (1)主な施設の数, (2)各種水利施設問の制約・被制約関係, (3)各施設のもつ水利権の性格, (4)取水上の定め,の4指標によって,一般に水力発電や公権力の河川水利への介入の進んでいる「東北・関東・北陸型」,慣行的水利秩序の形成の進んでいる「東海・瀬戸内・北九州型」(この2つの地域的類型は支配的大用水の存否などによりさらにそれぞれ3グループに細分できる.),水利秩序形成の遅れている「山陰・西南九州型」の各類型を得た.