地理学評論
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群馬県東南部における酪農地域の形成—東京集乳圏の拡大に関連して—
斎藤 功
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1968 年 41 巻 10 号 p. 623-640

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抄録
群馬県東南部で,酪農地域の発展過程を牛乳産業を構成する搾乳業者,酪農家,乳業会社の歴史的関連から考察した結果,酪農地域は牛乳産業の分化にともない6期の発展過程を示した.
搾乳業者は,幾多の変化をしつつも,戦前まで当地域の牛乳産業をリードしてきたが,第IV期における地元乳業会社の成立と戦時統制,続く第V期の外来中小乳業会社,第VI期の大手乳業資本の進出のなかで,地域社会と結びついた学校牛乳業者と牛乳販売地盤を生かしつつ大手乳業会社の牛乳販売店へと転化した.
明治30年代に乳牛飼養を開始した農家は,大正末期に搾乳産業組合を設立し,牛乳の処理・販売に着手したが,多くは失敗した.戦時統制により集乳圏が明治のSpot, 大正のlocalからRegionalとなるなかで,戦後の広範は酪農の普及が準備された.
昭和31年,集約酪農地域の指定以降,東京集乳圏の拡大にともなう大手乳業資本の進出のなかで多頭育酪農が行なわれた.この結果,農家の複合経営のなかで,酪農部門が経営結合の中心的地位を占めると同時に農家間結合をひきおこすに到り,牛乳産業は,単に酪農家のみならず,地域社会に及ぼす影響が大きくなった.
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