抄録
日本の9~10月は多雨期である.これは台風のもたらす多雨と梅雨類似現象としての秋雨(秋りん)が存在するためであると説明されている.その実態について〔I〕雨量統計的に, 9~10月の雨量分布を調べ, 6~7月の梅雨期の雨量との比較検討を行い, 9~10月の雨期が全国的な規模のもので,北日本,沿岸地方では梅雨期より顕著であることを指摘する.ついで台風雨量と非台風雨量を分離し,それぞれの地理的分布を検討すると共に,非台風雨量に関しては,その成因, 1回雨量の分布を調べ,前線性の降雨が,その主体をなすことを指摘する.
しかし9~10月の非台風雨量イコール〔II〕梅雨類似現象としての秋雨と考えることの可否については,この時期における前線型気圧配置の多発と非台風雨量の集中が単なる偶発的同時現象であるか,因果的な結合関係の有無を検討することにより確める.そして秋雨日には本州南岸に前線が集積する傾向が顕著であるが,逆に前線型気圧配置の出現イコール秋雨という関係は認められないこと,従って梅雨前線類似の秋雨前線が,天気図上に出現しても,必ずしも日本各地に悪天をもたらすとは限らず,しかもその定常性は顕著でない.要するに秋雨は梅雨現象ほど顕著な気象現象ではないと結論される.なお「秋雨は梅雨の逆現象で,北日本にはじまり,南下する」という説明の当否をも検討した.