抄録
世界における地理学の最も重要な潮流のひとつとしてフランス人文地理学派が注目されて久しいが,彼等がいかにして新らしい地理学者を育てているのかを知る方法のひとつとしてその大学における地理学教育を詳細に見ていく必要を強く感じていたので,筆者は2年間のフランス滞在中に,主任教授から学部の1年生までのあらゆる階層の学生に面接し,討論して,この稿をまとめた.私はフランスにおける地理学教育の欠陥をいくつか指摘したが,折しも,この論文の脱稿後,例の5~6月の大学改革運動の討論の中で,これらがフランス人自身も感じているところであったのを知って興味深かった.一方,地理学の本質であると言われる「地誌」が研究対象としても試験や講義の上でも事実上消えかかっている日本の状況が果して正常なのかと言う疑問を与えられることになったのは,筆者として,収穫であると思う.