フランス人が,日本の地理を研究する場合には,いくつかの問題点がある.例えば,フランスの地理学の伝統である綜合的な地誌研究が日本には少ないこと,又フランス地理学派の用語のもつ意味が,そのまま日本にあてはまらないこと,更には,日本語の障害や風物・景観の差異が考えられる.「日本の民家」を研究対象としてこの5年来,日本語の文献を使い,日本語による現地調査を試みてきた筆者として,上記のような問題を中心に日本地理研究上の問題点をあげ,インドシナを中心とするすぐれたフランス地理学派の伝統をうけつぎ,グローバルな観点からの日本地理研究のあり方について論ずる.