地理学評論
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十勝平野の地形発達史
平川 一臣小野 有五
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1974 年 47 巻 10 号 p. 607-632

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抄録

日高山脈とその東麓の十勝平野において地形・表層地質調査を行ない,氷河地形・扇状地・河岸段丘・海成段丘の編年を行なった.ヴュルム氷期にかかわる十勝平野の地形発達史のうえで特徴的な出来事は,海成のO IV面(関東の三崎面相当)の時代とその後に大きな下刻期があり,海面最低下期に向って谷が埋積され, filltop段丘の形成や扇状地の大規模な拡大が生じたことである (KoI面の時代).この岩屑供給の多かった時代はヴュルム氷期の前半で,日高山脈ではこの氷期における氷河の最拡大期に当たっている(ポロシリStadial). ヴュルム氷期の極相には,日高山脈の氷河は著しく縮小し(トッタベツStadial), 山麓部ではKoI面の時代に比べてはるかに小規模な扇状地の形成が行なわれた.一方,十勝川下流域では,著しい海面低下によって深い谷が形成された.後氷期の海面上昇期には,下流では谷を埋積して沖積層の形成があり,中・上流域では段丘面・扇状地面の大きな下刻が行なわれた.氷期・間氷期のくり返しのなかで,十勝平野の地形発達は,十勝川下流域では海面変化に,扇状地・山間地域では気候変化にそれぞれ制約されていると考えられる.

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