地理学評論
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東京内部における住工混在地域の構造—荒川区・大田区の分析—
竹内 淳彦
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1974 年 47 巻 12 号 p. 748-760

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抄録
大都市東京の内部には工場と住宅とが混在している地域が存在しており,都市再開発の焦点となっている.大都市内部の再開発は対象地域の十分な実態認識の上に立って行なわれるべきであるが,住工混在地域の場合,事業所台帳にも載っていないような零細な工場が多く,また土地,建物の利用形態も複雑であるため詳細な実態調査によらなければその性格解明はできない.本研究では東京内部の典型的な住工混在地域のうち西糀谷(大田区)と荒川(荒川区)の二地区を調査対象地区とし,地区内全工場についての訪問調査結果をもとに,大都市内部の住工混在地域の構造を解明した.
その結果,両地区とも京浜における二大工業地域である城南と城東の生産集団の中にあり,その影響を強く受けながらも,生産・流通上の直接の結合関係を極めてせまい地域内で完結させていること,また,従業者の居住と職場,すなわち住工二つの機能が地域的に同居していることが明らかになった.このような地域では昼間の住民と夜間の住民がほぼ一致し,工業を生活の糧としているわけであり,大都市のなかでこのような地域は「生産・居住一体化地:域」=「産業地域社会」と定義し位置づけることができる.大都市内部の再開発に当っては,その重要な構成要素の一つである生産・居住一体化地域の構造と機能を十分に検討,評価してかかる必要がある.
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