地理学評論
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地方都市周辺地域の都市化
小出 武
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1974 年 47 巻 4 号 p. 223-235

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抄録

筆者が1953年に都鄙生活関係圏の研究1)を発表して以来この方面の研究は多くの研究者によって進められてきた.その中には近郊地域の都市化の研究もとりあげられている.ただこれらの研究は生活関係圏にせよ都市化にせよおのおの独自に行なわれていて両者を一連の過程として位置づける考察は必ずしも十分に行なわれていない.筆者はこれを一連の連関として捉え,近郊地域が都市化するまでには3段階を想定している.第1段階は都市と農村地域との間に日常生活を通じて密接な交流が成立する段階,第2段階は都鄙間の交流が量的に堆積すると農村の機能や構造や景観が漸次都市的なものに変化する時期,第3段階はこの現象がさらに進んで農村の特性が消滅して質的に都市化してしまう時期である.
筆者はこれらの過程を実証的に研究しようとし,今回は第1段階として成立した生活関係圏内の農村地域に第2段階としての変化がどの程度生起しているかを実証的に考察してみようと考え,指標としては総人口の増加指数・非農家率・農家100戸当りの恒常的勤務者数すなわち通勤者数を採用した.これらを総合した都市化指数と3指標の指数との相関を求め,代表的指標の発見につとめた.対象地域としては長野県内の6盆地を採用したが,調査の結果は生活関係圏内において都市化の進んだ地域,ほとんど都市化のみられない地域,およびその漸移地域と,一種の圏構造を描いていることがわかった.また第2段階にとっての代表的指標は非農家率であることがわかった.

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