地理学評論
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地下水の水位の変動特性を数量化する一つの試み 自噴井を利用する場合
高村 弘毅
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1974 年 47 巻 6 号 p. 359-369

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抄録

地下水位の変動は地域の帯水層の物理的性質を反映する.とくに,沿岸部では,地下水位の正弦波形変動が潮汐に応呼して起こる.地表水体が単純な調和関数的運動をもって変化すれば岸の方から内陸に一連の波形が伝播するであろう.従って,潮汐の影響下にある自噴井の湧出量はそれに対応して変動する.故に筆者は,利根川の河岸からいろいろの距離にある自噴井を用いて同地域の地下水の変動特性を定量化することを試みた.自噴井の湧出量の変動に関するデータは岸から内陸に向かって一直線上にある三つの自噴井から得た.定量化に用いた筆者の方法は次のとおりである.自噴井の日湧出量の変動特性は振幅変動係数Qrを用い,年間の単位時間の湧出量Qの頻度分布の特性値は湧出量の頻度の最多値Pdと分散度Qd(累加曲線から求めた)を用いた.一年間の湧出状況は,自噴井の湧出量状況曲線を作り,これから豊水期湧出量QH・平水期湧出量QM・渇水期湧出量QLの三つの値で示した.地下水の挙動を支配する帯水層の透水性は,各観測井におけるQの経時変化曲線からその振幅値Δhを求めて透水係数に相当するk値を計算して得た.以上の解析から,本地域の地下水位は潮汐型周期変化をもつ利根川水位Rrと降雨Pとが密接な関係にありその特性が各指標値に現われていることが判明した.

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