山陰沿岸の広い範囲にわたり,波食棚・ノッチなどの海食微地形と,離水浜・浜堤などの海成堆積地形の測量を行なった.また海岸平野の内部から発掘された多くの考古学的遺物・遣跡とその包含地層の観察を行なった.このようなデータを海抜高度の面から整理して,およそ8つのグループにまとめることができた.これらの各グループの形成時代を判定して,海面変化曲線を画いた.この作業過程で海岸砂丘の形成史から知られる資料や古記録などをも検討し,総合的に判定をするよう努力した.その結果,山陰海岸では,縄文前期の海進の他,縄文後期と平安期にも強弱の差はあれ,海進が認められ,その間,縄文中期の西灘海退,弥生・土師期海退等が認められた.