地理学評論
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房総半島南東岸の完新世海岸段丘について
横田 佳世子
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1978 年 51 巻 5 号 p. 349-364

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抄録

房総半島南東岸,南三原~相ノ浜間の海岸段丘面は,千倉付近を模式地として,高位より,岡瀬田面,寺庭面,平館面,瀬戸浜面の4面に大別される.これらの海岸段丘形成期の相対的海面変動については,おもに各面を構成する堆積物の特徴から,岡瀬田面の形成(縄文海進の頂期)以降,一方的に海面が低下し現在に至ったのではなく,寺庭面形成期(3,500年前ごろ)に海進が認められ,小規模ではあるが海面そのものの上昇があった可能性がある.調査地域のように,地殻の隆起速度が大きい地域でも,地形発達に小規模な海面変動が影響している可能性は十分考慮されるべきであり,これを無視して,地震隆起の累積という観点だけから段丘の発達を論ずることは危険である.

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