都市の地表面と屋上面における長波放射収支成分の相違を示し,さらに,都市地表面の長波放射場に及ぼすしゃへい効果(建物の影響)について論じた.観測は1969年10月下旬に,夜間の快晴時をえらんで,東京の都市域で実施された.長波放射収支量は風防型放射収支計で直接測定され,上向き長波放射量は,サーミスター温度計による地表面温度測定値から計算され,さらに,両者の残差として,下向き長波放射量が求められた.その結果,都市地表面の長波放射収支量は屋上面の5割弱であり,これは,主として都市地表面の下向き長波放射量が屋上面に比べ,大きいためであることが判明した.また,地表面における下向き長波放射量の増加は,建物によるしゃへい効果に起因していることが確かめられた.