地理学評論
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佐渡島の完新世段丘と地殻変動
田村 明子
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1979 年 52 巻 7 号 p. 339-355

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抄録

佐渡島の完新世段丘の分布・形態・構成層等の調査と旧汀線高度の測定を行ない,更新世段丘の旧汀線高度と比較して,佐渡島における旧汀線高度に現われた地殻変動を考察した.
完新世段丘は,佐渡島をとりまいてほぼ全域に分布し,一部では2段に分かれる所が認められる.国中低地および羽茂低地の完新世段丘は,数10mを超える厚い海成堆積物からなるのに対し,その他の外洋に面した地域では,基盤岩上に2~4mの段丘堆積物を載せる波食棚状の地形として発達する.完新世段丘の旧汀線高度は,大佐渡で最高8.9m,小佐渡で5.6mであり,北西から南東方向へ傾き,その傾動量は,それぞれ0.06/1,000(103年), 0.02/1,000(103年)である.更新世段丘の旧汀線高度変化は,完新世段丘のそれとよく似ており,とくに大佐渡でその傾向が明瞭に認められる.それらの傾動量は古い段丘面ほど大きく,変位の累積性が認められる.また,更新世段丘の最大隆起速度は,T2面を下末吉面に対比することにより,大佐渡で1.1m/1,000年,小佐渡で0.9m/1,000年となる.この推定値は完新世段丘のそれとほぼ一致する.

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