地理学評論
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東三河織物業の生産構造
合田 昭二
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1979 年 52 巻 8 号 p. 439-454

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抄録

既存織物産地における社会的分業の展開,およびその新興産地と対比した特色は,零細経営の存在形態に集約的にあらわれる.東三河の零細織布経営体は,産地の伝統性を基盤に,おもに技術経験者によって特別な助成政策に依存することなく創業された.そのことは,創業・増設・機種転換の際に安価な設備を可能とし,経営の存立を容易にした.生産が広巾化・装飾織物化・化合繊化し,産地の製品構成がより多様化する過程で,労働力需給の逼迫,とくに若年労働力不足が深刻化したため,織機台数の減少,経営規模の縮小へとむかうものが,量産・非量産両分野で目立った.その結果,とくに零細経営において部分工程の外注化が進み,産地内の社会的分業の展開が著しいものとなった.織布経営体と直接に取引をする流通担当者の分布範囲は狭域的で,産地卸商の占める地位は大きいが,その取引関係は錯綜し,固定的・専属的系列関係は少ない.このように東三河産地は,大都市零細産業集積地域との類似が認められ,新興農村工業産地とは明白な対照をなしている.

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