地理学評論
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大和国乙木荘における荘園村落の発達過程
片平 博文
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1980 年 53 巻 1 号 p. 1-17

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抄録

いわゆる集村化は,わが国の平安~室町期にかけて,広く展開した集落形成の特異な現象である.本報告のフィールドとした奈良盆地においても,そのことが確認された荘園村落は少なくない.そういったなかで鎌倉中期にあたる文永年間(1264~1275)に,すでに明確な集村形態を呈していた乙木荘は,かなりユニークな存在といえる.乙木荘における荘園の組織化は,少なくとも3次にわたってなされ,その時期は平安末~鎌倉初期を大きくはずれるものでないことを,筆者はすでに報告した.その結果に基づいて,屋敷地の分析を行なったところ,乙木荘は,最初から集村形態を呈していたのではなく,初期には小村ないし疎集村と呼ぼれるべき形態をとっており,それが数次の段階を経て集村を形成するに至ったことが判明した.またその時期については,当荘の組織化が結果的にいわゆる均等名形態をともなっているとみなされることから,平安末~鎌倉初期の可能性が強い.さらに荘園村落の発達過程の背後には,耕地の影響が作用しているものと考えられる.

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