地理学評論
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西三河平野における水稲作の生産組織化
松井 貞雄
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1980 年 53 巻 2 号 p. 75-92

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抄録

安城市高棚営農組合を取り上げて都市近郊型稲作生産組織のモデル化を試み,次いでここでモデル化したような生産組織が西三河平野に拡大している様子をみた.さらに,この生産組織化の要因と地域的基盤を考察した. (1) 安城市高棚営農組合は,農協から再委託を受ける大規模受託経営組織で,普遍化した脱稲作農家群を背景に,集落内の自立経営農家が地域農業の担い手として組織されたものである.受託営農組合優位の受託条件であるが,水田利用再編対策下でも何ら動揺していない.これを借地供給増加基調の都市近郊型生産組織のモデルとみることができる. (2) 安城市に20,豊田市南部に2の同様な営農組合が生まれて,西三河平野では稲作生産組織化が進行している. (3) 生産組織化の要因は,農家兼業化の深化の後に時を同じくして進展した圃場整備・大型機械化稲作・減反政策によって,稲作に魅力を失った脱稲作農家ではあるが農地を財産として維持することによって脱農家となりきれない農家が普遍化したことと,地域農業の担い手を育成した農協の指導力である. (4) 生産組織の要因と契機を生み出し支えてきた地域的基盤としては,都市化の影響を受けて変容しこれに対応してきた地域農業基盤,日本デンマーク地帯の生産共同化の伝統的基盤,乾田なるがゆえに圃場整備が遅れていた明治用水受益地域の耕地条件などが考えられる.

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