地理学評論
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都市近郊における稲作受託組織の展開とその特質
藤井寺市と泉大津市の場合
高橋 正明
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1980 年 53 巻 2 号 p. 93-107

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抄録

都市近郊における受託組織の特質と問題点を明らかにするため,大阪府藤井寺農協と泉大津市農協における受委託事業をとりあげ,比較検討した.その結果,両者における組織化の差が受託料金に反映し,それが事業の消長と関係していることが明らかとなった.すなわち藤井寺農協の場合は,三重県から労務者を雇用する集団人力作業方式であるが,三重県の労賃水準が高いこともあって受託料金が高騰し,事業の存続は困難になりつつある.一方,泉大津市は,最初は福井県から季節労務者を雇用していたが,労働費が増大したため,これをオペレーターグループに再委託する方法に改めた結果,福井県の労賃水準が低いことと機械の導入により,受託料金は藤井寺の112におさえられ,事業実績は好調である.
このような料金差をもたらした要因としては,受託内容・受託規模ならびにそれらと関係する地域固有の条件などの内的要因と,労賃の高騰およびオペレーターをめぐる労賃の地域格差などの外的要因が指摘できる.そしてこれをどのように展開させるかは,農協指導部の対応姿勢によるところが大きいと考えられる.

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