抄録
本研究では,瀬戸内地方にある芦田川流域の3,200の家庭を対象としたアンケート調査および水使用量調査の資料にもとついて,家庭用水の需要構造を分析した.ダミー変数を説明変数に含む三つの線形の水需要関数を,重回帰分析により導いた.その結果,家庭用水需要の重要な因子は,家庭規模(家族人数)・地下水の利用・水洗トイレの利用・家庭外や屋外での水利用であること,水需要の家庭規模に関する平均弾力性は0.30~0.73,所得および価格の弾力性はともにゼロに近い値であることが示された.これらは,前報(新見, 1977)の結果とよく一致した.また,分析の結果にもとついて,都市化にともなう家庭用水の需要構造の変化についても考察を加えた.