地理学評論
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奥飛騨山村・上宝村における非通年型雇用の展開と農業・農民層の動向
岡橋 秀典
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1980 年 53 巻 8 号 p. 511-530

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抄録

戦後高度経済成長期に,非通年型雇用の顕著な展開をみた1山村を事例として,その雇用の性格,そこでの農業および農民層の動向を考察した.その結果,この山村の近年の動向は公的施策と深く関わっていることが明らかとなった.すなわち,1965年頃から非通年型雇用を中心に雇用機会が著しく拡大したが,その多くは公共土木投資と結びついた建設業によるものであった.その不安定な雇用条件は失業保険金によって補完されている.また,農業面では,国の農業政策の影響が顕著で, 1970年以降農産物の商品化による農家経済再編の道は,大部分の農家で消え去った.一部の発展的部門も補助金に依存するところが大きい.農民層の動向をみても,公的施策に依存する傾向が顕著である.上層では農業補助金,中層では公共土木投資と雇用保険,下層の老人世帯では年金である.そのなかで,中層の存立基盤は米の生産調整継続の下で不安定化してきている.

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