本研究は内陸型の電気機器工業をとり上げ,この工業の企業組織と労働力構成およびその地域的側面を解明しようとしたものである.
南佐久地方の電気機器工業の企業組織は専門メーカー,分工場・子会社,下請工場,内職という階層的構成をなしている.その地域的な位置関係は,専門メーカー,分工場・子会社が中心都市と農村部の拠点的地点に,下請工場は地域全体に分散し,内職は各工場の周辺に出されるという形をとっている.この工業の労働市場は,基本的には学卒若年労働力と主婦労働力の二つに分かれ,専門メーカーのような大規模工場ほど学卒若年労働力に依存し,下請の零細工場になるほど主婦労働力に依存するようになる.そして,労働力の質・労働市場の差異に応じて労働力の通勤可能距離が異なり,このことが工場立地パターンを分散的なものにさせている.