Huffモデルに代表される従来の確率的商圏設定モデルは, Luceの提唱した個人選択公理をその理論的根拠としている.しかしながら, Luceの個人選択公理を消費者の店舗選択行動に適用する場合,なぜ相対効用度と選択確率の間に1対1の対応関係が存在するのか明らかでない.したがって, Luceの個人選択公理をその理論的根拠としている従来の確率的商圏設定モデルは,消費者の店舗選択メカニズムが明確に定義されないままにモデルが構築されていると言える.本研究は,以上の観点から,消費者の店舗選択メカニズムを明確に定義した新たな確率的商圏設定モデルを提案し,その有用性,従来のモデルとの関係を考察したものである.