地理学評論
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両毛地区における自動車関連下請小零細工業の存立構造
松橋 公治
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1982 年 55 巻 6 号 p. 403-420

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抄録

機械関連下請工業が工業構成上重要な地位を占めている地域において,下請企業群の集団内の構造,存立基盤の特質をとらえておくことは,下請企業群のみならず,地域経済の動向を見通すうえできわめて重要であると考えられる.本稿では,両毛地区の自動車関連下請工業,とくに当地区で集積の著しい三次下請の小零細経営層を取り上げ,その集団内の構造,存立基盤の解明をめざした.その結果,依然として自動車への依存度が高く,そのなかで親企業の「多角化」,また集団内での取引,とくに「応援生産」という相互取引関係も進展しつつあることが明らかになった.こうした構造は,農山村部にみられる垂直的なそれとは異なり,東京の城南地域に代表されるような大都市内部における「多角的結合形態」に近づきつっある.しかし取引構造や小零細層の独特の動向も,当地区の現状では,自動車関係の下請関係における低工賃に対応したものであり,ここでの下請関係を維持するための新たな条件となるにとどまっている.存立基盤では, (1) 個別経営的条件としての家族従業者の利用と長時間労働, (2) 小零細層の集団的条件としての「応援生産」,および(3)多角化を可能にする立地条件としての機械工業の地域的集積,の3点が重要であることが明らかになった.

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