地理学評論 Ser. A
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多摩丘陵源流域における流出機構
田中 正安原 正也丸井 敦尚
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1984 年 57 巻 1 号 p. 1-19

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抄録

多摩丘陵の一角に設定した流域面積2.2haの小試験流域において,野外観測に基づいて降雨流出時における流出成分の主体を明らかにするとともに,その流出機構について考察を行なった.その結果,以下の結論が得られた. (1) 降雨流出時における流出成分の主体は地下水流出成分である.総流出量の約90%は地下水流出成分に起因しており,表面流出成分は総流出量のわずか10%程度を占めるにすぎない. (2) 降雨に対する応答の早い多量の地下水流出は,ダルシー則に基づく流れでは説明することができない.降雨流出時においては,ダルシー流よりはるかに速い卓越流が地層中に存在している. (3) この卓越流は,地層中に形成されたパイプの中を流れるパイプ流であり,良好な排水機能としてのパイプ流は,丘陵地源流域における流出機構を考える上で,重要な役割を果たしている. (4) パイプ流の特徴として, pulsating flow現象が認められる.

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