駿河湾奥部の沖積平野は,狩野川中・下流域の谷底平野,河口域の三角州,黄瀬川・富士川下流域の扇状地,富士・愛鷹山南麓の低湿地といった地形的に異なる低地からなる.完新世初期に噴出した三島溶岩流がつくった地形と,海進期以降に沿岸部に形成された海岸砂礫州が,本地域に広がった海域を閉塞的な環境にしたことが明らかになった.海退期には,狩野川・黄瀬川の上流域からの火山性物質の供給が増加して,三角州や扇状地の発達を促した.これに対して,海側を砂礫州によって塞がれ,背後からの物質供給量の少なかった愛鷹山南麓地域では,低湿地の状態が続くことになった.
本地域においては,富士山起源の溶岩の流出,砂礫州の発達といった沖積層堆積過程で起こった現象が,古地理の変遷に最も大きな影響を与えた.これらの要因に,各流域ごとの物質供給量の違いや時間的変化などが加わって,地域差を生じた.
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